2:獣医師から医学部編入を活用し医師免許を取得したWライセンス取得者
が持ちうる将来的可能性と活動の拡大領域ならびに発揮できる独自性について
将来的可能性
昨年から今年にかけて関心を呼んだ、デング熱やエボラ出血熱のような人獣共通感染症(ズーノーシス)に関する懸念が国内外で高まっています。
最近、国内の医学部には寄生虫やウイルスによる人獣共通感染症の研究や教育を行う専門組織や講座を新設する動きが見られます。家畜の大量生産、ペットの流行、野生動物の人里への出現など、動物と人間の接触が増え、自然界にいる寄生虫やウイルスがいつ人間社会に侵入してもおかしくない状況を呈していて、デング熱などのように海外の感染症と見られていた疾病が国内でも広がる危険が生まれています。かかる情勢を受け、人獣共通感染症への対応力を社会全体で高める必要があると考えられているのは確かで、獣医師と医師の双方の免許を持つダブルライセンス取得者は、まさに時代が求める存在だといえます。
活動拡大領域について
単純ですが、診療や就業の対象が大幅に広がるというのがこのルートの特徴です。獣医師は動物病院、官公庁、製薬会社、食品会社、農協、漁協、博物館、動物園、水族館や研究機関等を働き場としていますが、医師免許を持てば病院はもちろん産業医としても活動できるので、民間企業全般に働き場が広がっていきます。研究に従事するにしても、動物と人間の両方から医療行為ができるため、視野が格段に広い研究ができることは言うまでもありません。
発揮できる独自性について
発揮できる独自性が研究、臨床双方で様々に考えられるのもダブルライセンスの特徴です。
近年注目を集めているiPS細胞ですが、対人間の再生医療への応用のためには幹細胞の状態から臓器や組織へと成長させていかねばなりません。その成長を豚などの動物の体内で行う研究が世界各地で進められています。ダブルライセンス保持者は、この研究に最も貢献できる存在でしょう。
また、人獣共通感染症のへの対応は、獣医師法だけでなく医師法においても呼びかけられており、ダブルライセンス保持者は、対人医療行為だけでなく、対動物医療行為、ペットとの接し方といった多角的なアプローチで対応することができ、個人としての公衆衛生への貢献度は一気に高まるのです。更に言えば、これらの人獣共通感染症は家畜を媒介として広まるものも多いので、ダブルライセンス保持者は食糧生産、公衆衛生、医療行為と三つの分野から人間社会を支えていくことになります。単独で幅広いアプローチができる存在ですので、世界食糧機関や世界保健機関など、国際貢献できる余地も多くあるため、海外でも活躍される方が多いのです。